知名定男「グッナイ・マイ・ハニー」on NHK

NHKアーカイブスは「ゲート通り」だった。新聞のテレビ欄で発見、留守録しようかと迷っているうちに既に番組は始まっていた。写真家の何某が登場するあたりステロタイプな構成かと油断していたら、次の瞬間、思いがけず知名定男が寂れ果てた中の町界隈を彷徨っていた。30年前《本土進出》の頃の中の町といえばシングル盤「IKAWU」のスリーヴ写真の頃、民謡酒場「タボラレ」の頃ではないだろうか。流れてきた曲は、これも思いがけない「グッナイト・マイ・ハニー」。しかも安アパートっぽい一室で知名定男がギターで弾き語りする姿が映し出される。その素朴な、味わいぶかい唄声に心奪われる。現在のご本人曰く、一昨年の芸能生活50周年記念公演でこの曲を歌ったところ会場ですすり泣く声も聞かれたという。この曲をつくってよかったと。ならばなぜにこの路線はもう活かされないのだろうか。ミュージックマガジン最近号のインタビューではポップスはネーネーズに任せる云々とあった(立ち読みだったので不正確)。それはそれでかまわないが、たとえば近作の島唄を集成した作品。別冊ブックレットには島唄に関して精緻で定番の記述が乗っているにもかかわらず、お囃子を単に「ネーネーズ」で済まされている事実が悲しい。古謝美佐子でなければ、と言っているわけではない、メンバーが誰なのかわからないクレジットがまかり通ってしまうとは軽ろんじられて扱われているとしか思えないのだ。まるで高価なディナーショーのために毎年来日するプラターズみたいなものか(ちょっとちがうか)。とまれokinawaを語れば唇寒し、ということで、せめて来年2月の公演では知名定男でしか歌えない歌を期待します。