交響絵巻源氏物語十二支・冨田勲@愛知芸術劇場大ホール

仕事がずれて痛恨の、なんと30分遅刻で入場。開演18:15は早すぎる。愛・地球博前夜祭ウィークイベントとして、またNHK名古屋開局80周年記念として開催された幻想交響コンサート「よみがえる源氏物語絵巻」。往復葉書で応募し当選していた。ロハとはいえ座席は2階最後尾、大型カメラのすぐ脇、カメラマンの動きがちょっと気になったけど。映画ロケで使われるような自由に移動できるカメラ装置(なんていう?)も控えめながら舞台を狙っている。ステージ上のオーケストラを見下ろすような高い位置に舞台が設けられ既に5名の姫たちが舞っている。5つの窓があり、簾から出入りする(これは御殿の渡り廊下である)。その遥か上方にはしだれ桜が咲き乱れている。中央に大型ハイビジョンモニタで絵巻や四季の風景が映し出される。なんと豪華なことか。前列には邦楽器奏者が並ぶ。指揮をされているのは冨田勲ご本人ではないか。左脇にナレーターの関根惠子。このナレーションが全体の流れをリードしていくのが痛し痒しだが《おいシンコ》(太陽にほえろ!)の頃からのファンなので許す。「交響絵巻源氏物語十二支」。途中、幻覚にうなされるような効果として、サラウンドの後方PAも使ってサンプリングされたナレーションや琵琶の音が会場をぐるぐる巡る。また後半、突然、左手3階席に笛奏者が現われたり。圧巻は、指揮者が指揮台脇にいったん座り込んでオーケストラは休憩、シンセサイザーのみとなった場面。あの、深いエコーのかかった重低音がホールに鳴り響く。これぞ飢餓海峡、マイティジャックの昔から今日まで冨田勲ワンアンドオンリーの世界。そもそも当方、生オーケストラさえ慣れていないのに、邦楽器さらにシンセとの共演など初めてのこと、舞台や照明を合わせればこれは2万円でも3万円払ってでも安い内容である。1時間半にわたる大作が終わり拍手が続くなか、幾人かは帰路を急ぎ出す。しかしステージ上(オーケストラの階上)では新たにマイクが並んでいき、姫たちに替わってぞろぞろと子どもらが登場する。冨田氏が幼少期を過ごした岡崎に住む小学生たちだ。そうか、とうとう、あの曲で締めるのか。再び冨田氏登場。「皆さんご承知かもしれませんが、この「青い地球は誰のもの」を作詞した坂田寛夫さんが3日前亡くなられました。地球博を待たずに」。パンフを後でみれば予め予定されていた曲だったわけだが当方には全く思いがけないプレゼントであった。イントロがフル・オーケストラで始まった瞬間から涙が止まらない。合唱のマイク・バランスが時々くずれ一人のボーイソプラノが際立って聞こえるところなどかつてのマイティジャック、キャプテン・ウルトラの合唱団そのままであり、その初々しさを携えた出来栄えは美しかった。その間にも家路を急ぐお客がいて、いったいきみたちは無料だというだけで何を体験しに来ているのだと一喝したかったが涙が止まらないため断念、そもそもこの曲の間、ハンカチで目頭をおさえていた観客など当方くらいではないか。さすがに嘉手苅林次@Tokuzoのハシゴは決行せずに近鉄急行で帰った。私の愛・地球博は、こうして終わった。