あきれたぼういず/川田義雄 - 楽しき南洋 (off note/華宙舎)

新年なので、旧年に求めたもののうちからおめでたいものを。オフノートのレーベル内新レーベル(いったいいくつめか?!)、瀬川昌久氏監修による復刻盤。瀬川昌久氏による復刻といえば近年ではBridgeから「日本のジャズソング」増補版が挙げられるだろうし、また本復刻シリーズの前夜祭的位置づけのような、大谷能生との共著*1も表している。さて、本作がとても懐かしく思えるのは音楽そのものではなくてスタンダードたる復刻のかたちに因る。ブックレットが厚いために通常のプラケースよりひとまわり大きい2CDケースに収められ、そのブックレットにはバイオグラフィと曲目解説とともにディスコグラフィが掲載されている。表を見れば、過去にリリースされた他社の復刻盤にどの曲が収められているかが黒丸を使って一目でわかるものだ。一般的な代表作「浪曲ダイナ」など本作には納められていないのは、過去にビクター等で復刻済みであるから。つまり本作の購入者を想定するのに、既出の諸作を所有しているリスナーを前提としたリリースとなっていること、そこにはCDもLPも同列にちゃんと一人前のモノとして扱われている。こういったディスコグラフィはブルースとかジャズで一般的であったように覚えている(コレクターでもなんでもない当方が唯一入手したのは土山和敏氏*2によるSlim Gaillardくらいだ)。つまるところ、ダウンロードとは無縁な時代のままだということ。このシリーズ、アンソロジー「SP音源で綴る 二〇世紀之大衆藝能」は全30巻を予定していると聞く。また同時進行で、澤田隆治監修による「ミソラレコード」も立ち上がるという。当方が20代、パンク〜ニューウェイヴ以降、いったんロックを離れていくとともに古い音源に惹かれていった時期が「レコードコレクターズ」創刊(1982年)あたりに重なろうか。そういう時代を思い出して懐かしく思えた。

*1:「日本ジャズの誕生」青土社、なお本書で言及された音源の一部が誰でも同社内サイトで聴取できるというささやかなサービスあり。

*2:ところで「土山和敏」で検索すると、その懐かしいSlim Gaillardのディスコグラフィの画像を拝むことができる。また氏がレコード店を営んでいたこと、また昨年までブログを発表していたことを知る。然るに現在ではそれらのキャッシュでさえすべて消えうせていた。