ドアーズ・まぼろしの世界@名古屋シネマテーク

無料鑑賞券の有効期限が切れるぎりぎりで今池へ出向く。鮮明な画質は、既にフィルムではなくデジタル何やらという映写方式であろうか。出来事や事件を編年体に追う、意外にもオーソドックスなヒストリーものであった。ジム・モリソン演じるドライバーが砂漠を突っ走るなか、カーラジオで「ジム・モリソンが1971年に死亡」というニュースを耳にするシーンはほんとうに未発表自主制作映画の一こまであったのか、冒頭に《追加撮影された映像が一切ない》という断りがあったからそのとおりだろうが、まるで本作を待ったかのようなはまり具合、でき過ぎか。いまどきのドキュメントでは必ず関係者のインタビュー・シーンを細切れに交える手法がスタンダードとなってしまったが、この点で本作品は潔い。これまでドアーズのこと、とりわけ他のメンバーのことに疎かった。Gtがフラメンコを出発点ゆえピックは使っていない、とか、Dsもジャズ出身で独特のオカズのたたき方にも納得、そして映像を通して、Keyboardの存在が気になった。ステージでジム・モリソンが倒れてもただ一人弾き続けたり、常にグループを客観視しようとしたりなど存在感があった。反体制など当時のニュース・フィルムを交えていくのは教科書的で説明すぎるが止むを得ないか。今年になって初めてDVDで「ギミーシェルター」を観ることができ、その流れであれば、本作品もまたDVD扱いとなったろうが、たまたまこうして大画面で観る機会を持ち、各人の表情など含めトータルで82分を楽しめた。監修:野沢収のクレジットも見逃さなかった。先ほどのストーンズとあわせて、ロック神話の終焉ということになるのだが、その象徴をみとめるとしても、それでもなお、日々ローカル都市でリリースされていったガレージ、JAフォロワーたちの存在を無視することとはできず、せっせと復刻CDを集めていくのである。