望月治孝、ヤマモトタカフミ、穂高亜希子、利光雅之@Lucrezia

お盆の帰省ではなくて浜松へ。「Summer Songs」と題された企画へ。望月治孝。事前に「きょうはPAを使います」との情報を得て録音マイクに急遽アッテネッターを通す。ステージにはいくつかマイクが設置され、アタッチメントを通して多重に聴こえてくる。いつもの望月治孝のライヴに馴染んでいる者としてはノイズとサックスとが均等な音量で提示されて新鮮。ただしPAを通すことで望月治孝固有の空間に変えてしまう磁力は弱められ(それは意識してのことだろうが)Lucreziaというハコに歩み寄った感がある。ヤマモトタカフミ。まずel-bsで一,二曲、これはまさにdont care なNo Waveで愉快痛快。続いてel-gtの弾き語りはアシッド・フォークの既視感が強くて優等生らしい。Bsの味わいがだんとつだった。開演してからフロアの後方で佇んでいた女性がステージへ。穂高亜希子さん。ライヴでお会いできたのは静岡以来だから4年弱。この間幾枚かのCDRが上梓されている。格段に演奏が上手くなっていた。だがたとえ近作が「くまさん」云々メルヘンがかった、わかりやすさとしても楽曲じたいは世を偲ぶ仮の姿、発声そして音を出す緊迫感は変わらない。「女性シンガーソングライター」と括ることはたやすいことだが、そう呼ぶことにどんな意味があるというのだろう。演奏途中、エアコンを切るよう指示が入り、いつもの望月治孝の役どころを喰っていた。利光雅之。彼のライヴもまた2年ぶり、前回もここLucreziaにて。el-gtの音が細かに砕けて美しく拡散していく。彼の轟音にカタルシスを感じる。あみのめよりもはるかに純度が高い。最後に競演。ここでも穂高さんのエレピにめまいがする(サイケ**といふことなかれ…)。ヤマモト氏を除けば、3名はたとえば穂高亜希子のファーストCDRで名前を連ねていた。3者が共通して、5年を過ぎてなおもコマーシャリズムと絶縁した活動を続けていることに一筋縄にはゆかぬ音楽への志を感じる。音楽史(誰の?どこの?)に載らないことは習作でも同人誌を意味することにはならぬ。今宵の企画は望月くんだが当方にとってもこの5年の時間を省みる、鳥瞰するような体験だった。残念なことに録音中にKorg MR-1が故障、後日、ハードディスクがおじゃんとなったことを知る。