浦邊雅祥×佐藤通弘@酒游舘

 第二名神ができてから鈴鹿峠越えする車輌が減ったのではないか。近江八幡まで夕刻5時を避けたとはいえ一時間強で到着。mixiに藪沢小屋の案内と浦邊雅祥の案内が上ってくると夏が来たと思える。浦邊さんから「ビデオだったら据付は駄目だ、手持ちカメラがいいよね、ロックだから」と妙な承諾をいただき嬉しくなる。今宵は前もってライヴ・レコーディングが謳われており、開演前に西村さんからお客にその説明が入るのは好ましいことだ。ただし当方は便乗した記録係だからフェアではない、とりわけ観客の顔が映ってしまうことが避けられないことがあるから。とはいえ撮る思いを断つことができず、せめて足音を立てないよう靴を脱いだ。佐藤さんはステージ向かって右の椅子席で、結果として浦邊さんを見守るように座り続けた。中央に前もって1mには満たない角材が2本立てられ、過去と同様、ステージと客席の垣根がないであろうことを示唆する。共演とはいえお二方が並んで演奏する光景は冒頭と終盤のみ、酒倉内を活き活きと歩み出て演ずる。第二部では冒頭、客席後方、入り口の両脇に拵えた足場を順に昇り、会場を見下ろす位置から幽玄な笛を吹く。その音はアンプを通しエフェクタもかけられて会場を満たす。その高い位置で浦邊さんが両手を交差して胸に持っていく仕草を眺めつつ、これはどこかの有名な古典庶民芸能の一幕ではないか、なぜここに小沢昭一の取材がないのか、という思いにとらわれた。舞踏と三味線というシンプルな表現に、しみじみとした気持ちにさせられたからなのだが、佐藤の三味線がバッキングであるはずがなく、浦邊の動作にたじろぐことなく反応しているように思えた。つまり浦邊は奇を衒っているわけではないし、佐藤にとっても決して番外編ではない、ということだ。今宵は酔いを醒ましながらも長居をせずにお暇した。

  • 佐藤通弘 - 津軽三味線の世界 実況録音盤 於酒游舘(CD、Sakedelic)