佐伯一郎トーク&歌謡ステージ@はまホール

こどもの日恒例のイヴェント、今年は母親とともに観戦。招待券をいただいていたが開演に遅れて到着、既に専属歌手が次々とステージに現われ2曲ずつ披露していく。夫々を比べていけばいやがうえでも力量の差も感じられる、しかし唄とはのど自慢大会ではないのだ。みどころだったのは、用心棒のうち2人のソロを聞くことができたこと。トリオ時の派手な振り付けなどなく、真面目な人柄が伝わってくる歌唱であった。「兄弟船」はオリジナルよりもシンプルな唱法。もうひと方は音楽家として後輩の育成にあたっていることなど初めて知った。昨年は佐伯先生の出番が冒頭にもあり見逃していたが、今年は中盤からの登場である。客席左脇から登場、客席とのコミュニケーションを十二分に時間をかけて図っていた。しかし昨年からそうであったように腰の具合は万全ではないようで、ゲスト数名を挟んだ第二部の冒頭では椅子に座って歌い始めた。しかし(これも昨年と同様だが)一曲のみで椅子を後方へ退かせ、堂々の歌いぶりへ戻った。ご本人のMCから美空ひばりと同年であること、そして昨年は初期作品のメドレーだったが今年も美空ひばりのレパートリーから船村徹の超難関曲「みだれ髪」を佐伯節で見事に歌いきる。渾身の一曲。今夏に上梓されるという新曲も披露したがこれは昨年から続く企画ではないか。佐伯先生でさえ一枚のシングル盤ができあがるのにどれほどの歳月がかかるのか。いつも引用するが山下達郎ブライアン・ウィルソンの初来日に際し「ステージに立っただけでもスタンディング・オベイション」だとすれば佐伯一郎の場合もぴったりあてはまるはず。ましてや爆笑のトーク堪能も加えて。しかし佐伯先生の特異なところは、アーティストに留まらないこと。《歌う作曲家》と自称されるように、何よりも作曲家であり、いやそれにさえ留まらず、多くの門下生、カラオケ教室の生徒さんをかかえている。だから当方のようにアーティストとして(のみ)の興味で訪れる観衆がいても許されんことを。
もうひとつ。佐伯先生のように、地方在住で活動するアーティストは地元を離れると《中央》からはほとんど情報発信されない(佐伯一郎で検索すると惨憺たるものだ)。それにしても《地元》から軽視されてはいないか。先日、小川国夫の死を思うとき、なおさらそう感じる。代議士さんはそれはそれでよいのだが。