僕の音盤青春記

  • 僕の音盤青春記 1971-1976(牧野良幸、音楽出版社)長いことCDジャーナルを定期購読していた。全CD紹介というのがふるっていたし(湯浅や広重も執筆陣だった)再来月の新譜情報がいち早く紹介されるのもせっかちな当方にはスリリングだった。しかし全CD紹介の方針が終了した頃に購読料も切れそのままになった。その頃より牧野氏の連載が始まっていた。メールで感想を送り返事も来て嬉しかったけれどもそのままになっていた。ところが今月、彩色されて単行本化。牧野氏と当方は2年違い。しかしビートルズ(の余韻)にぎりぎり間に合った以降〜ニューウェイヴ前までの幸福な時間が追体験できる。いや決して牧野氏は日本におけるポピュラー音楽状況を総括しようしたわけではない。少年が或る世界へ入る儀式を丹念に記録したものである。洋楽、磁気テープ、レコード、コンサートなど。それをめぐる周辺人物の立ち現れ方が秀逸。カセットデンスケ、4ch、エアチェックなど小ネタだけの魅力ではない。

蛇足ながら牧野氏が自らのHPのブログで、当方に似た《ドストエフスキー体験》を記していた。その相似性とは1)新潮社「決定版ドストエフスキー全集」全27巻であること、2)一巻が欠けていたこと、3)長いこと気になっていたこと、4)あっけない発見の手段として同じ古本検索だったこと。牧野氏は第2巻だったが、当方は第17巻作家の日記(上)だった…。