里 国隆の復刻盤〜沖縄の笑い

  • 里国隆 奄美の哭きうた(テイチク)竹中労×照屋林助による幻の名盤の復刻。当時の解説が復刻されているためボーナストラックの解説なしの徹底ぶり。当時のスタッフ、復刻スタッフ明記。マザーグースレコードにて。

ところで照屋林助の名前がでた序に。最近上梓された、物故した沖縄の芸人の評伝を読んだ。ライターは全く沖縄とは無縁な立場から出発し(古今東西の差別の歴史に明るい)わずかな期間に膨大な文献を調べ、取材を続け(もちろんビセ社長に到達している)明晰な筆でまとめまれている。巷説飛語に惑わされず、それまでの「お山の大将」を物ともしない、ゆるぎない態度。ただそれにしても、である。その著作は照屋林助なき後でしか出せなかったであろう、確信犯的論法を含んだ態度でもある。たしかに沖縄の冷淡ともいえるあいまいさは抽出したのは優れている。ただそれを二分法で説明できた、とすることには疑問がある。照屋林助の全貌はまだ十分にヤマトで紹介されていない。北中正和のインタビューが座右の書であるとしても。たとえばてるりん館に併設されていた催眠療法部門。ワタブーショーの位置づけだけのために本人が狡猾になるわけはない。誰もが名声を望むわけではないし、名声は自ら呼び寄せるものでもない。著者が既成のジャーナリズムに反旗をふりかざすのに、利用されたきらいはないか。…とこんなことをブログで書いてシニカルに沖縄通をきどる人間にとってこそ手痛い内容の書物であり、ナイチャ側のアプローチとして「笑う」「沖縄」で検索できる他の作品(書物に限らず)に比べれば別格である。