まる福。ミラーボールズほか@KD Japon

まる福。をハシゴするのが目的で名古屋へ出発。JR鶴舞駅を降りて例によってChina Kitchen青蓮でホタテやら牡蠣やらリッチに食す。KD Japonには結局改装後初めて。あれ?脳震盪(のうしんとう、ひらがな表記)が出ない?すっかりそのつもりだったが平日のライヴは困難だったらしい。メンバーのICHIさんが客席に居られた。トップはDsとGtのデュオ。フリージャズ風にも70年代アメリカン・アンダーグラウンド風の器用な手さばき、やりたいことがいっぱい盛り込まれた、これが回転木馬だと知り、そういえば以前Polka Dot Slimで3人編成のを観たのを想い出した。次のtenpariiもマッチョを外した、ニューウエイヴ風、ギターポップ風の巧みなつくり。25年前の自分ならときめいて臨んだかもしれない。いったい、今宵のまる福。はどうするつもりだろう、という思いがよぎる。KD Japonの、全員椅子座り状態のお客に対していったい通用するのか。もしや消化試合になってしまうのでは…。私は少々疲れていた、いや中華店でのんだ生ビールがまわりかけていた。
三番手、ミラーボールズ。ギターをかかえた時代錯誤におしゃれな男女が準備しているときには全く期待していなかったが、一曲目から釘付けになった。70年代風のワンピースをまとった女性・北脇恵子は長い髪を真ん中で分けて、くりっと目を見開いて、ぶっきらぼうにも深みのある声が思いがけずとても魅力的で、それは関西の誰それの二番煎じではない、奇を衒わずに堂々と、個性的な声で、シニカルな風景を唄う。対する男・森真二は眼鏡+ジャケットで若き日の小西康陽風(風が多いのだが)で、奏でるのはボーカルと対位法のようなフレーズを、美しい音色のクリアー・トーンでからませる。歌心のあるギターとでもいおうか。そして間奏では二人がふらふらと、二つの分子がブラウン運動するように狭いステージを彷徨う。ときに背中がはっついたり、お互いに離れてしまったり。当方は二階から見下ろしていたものだから、その動きがよくみえて、ボーカルが吹き抜けの空間によく響いて、思わず数曲、ビデオ撮りしてしまったし、終演後、声をかけたら音源は持ってこなかった、と。
ミラーボールズの終演間際、まる福。のメンバー、フクゾウさんと天野さんがうしろでひそひそ打ち合わせ。まる福。一曲目は天野+フクゾウのデュオで「雨」、続いて「若い日々の僕らのあの歌を」と真っ向から勝負に出た。昨晩のノセノセ方法論とも相反する、正攻法に不意を突かれた。ちょうど当方が最初にカセットで出会った、幾分マニアックで情熱を秘めたまる福。徐々にステージ上のメンバーが増えていって「割れた鏡の中から」、ついに「フランキーの涙」ではフクゾウさんにマイクを向けられたお客たちが、控えめな名古屋のお客たちが次々と叫び出す。私もビデオを撮りながら叫んだ。フクゾウさんは(期待を外さず)肩車〜ハシゴを登って階上の客まで迫る。まる福。の勝利だ。終演後、ふと腕時計をみると近鉄終電に間に合うためのJR鶴舞駅にあと3分。最速ダッシュで駆けて間に合った。