ゑでぃまぁこん@旧グッゲンハイム邸

いつもなら山陽本線で車窓から眺めるだけの駅で降りるのは不思議な気分。とりわけ塩屋は山陽電鉄とJRの駅舎が非対称に連なり、海浜に近いこともあって、通過するたびに身の焦がれる思いをいだくロケーションだったから。駅周辺の地図をネット上で準備、いわゆる「阪神間モダニズム」最西の地域にして奥なるエキゾティズムを秘めた場所として洋館めぐりを計画していたのだが、当日午前に所用あり、塩屋に近づく頃には電車からみえる瀬戸内にも夕闇が迫っていた。塩屋駅界隈で何か食べておけるところは?と、駅そばのお好み焼きを食べていざ旧グッゲンハイム邸へ、しかしすぐに迷う。地図の縮尺がぴんと来ず、細道をどこまで行ったらよいのか、三叉路の位置づけは?結局、駐車場にいた地元の方にお伺いしたところ、もうひと越え、山陽鉄道の踏み切りを超えて東へ進めばすぐだった。危うく何の変哲もない民家の戸をたたくところであった(道に迷うとあせってしまうのだ)。ゑでぃまぁこんタヌキツネコワンマンライブ。1500円。リハーサルが押しているとのことで思いがけず階上の広間で待つように指示される。が、その職員から「まぶやーさん」と声をかけられる。S**くんだった。痛快な日本語のロックをバンドで聴かせてくれていた(わずかながら追っかけをしたくらい)のは21世紀初頭、当方が最後に観たのは2004年。思いがけず、こんなところで! 30 分押しで開演、実は(acid mothers styleとは程遠いが)前もって終演時間を問い合わせていた当方、確実に22時に近づくであろうと踏み、神戸宿泊を覚悟のうえでの塩屋入りであった(21時47分に塩屋を乗車しなければ日帰りは不可能だ)。《好きなだけやってしまいます。たっぷりどっぷりやりまくりの夜》と情宣にもあったとおりだった。わずか休憩を挟み、しかし徐々に各公共交通機関の終電が気になりだすであろう時間へ近づく。これではまるで、今年の日本シリーズみたいに電光掲示板の時計が12時近くを指す光景を想像した(行ったわけではないけれど)。しかしゲームと違ってこれはライヴ、演者の意向如何で何とでもなりそうなのに、ゑでぃさんは「ボーとしてます」と言いながらも次の曲のカウントを続ける。今宵フルバンド編成かつ女性コーラス(朝倉円香さん)を交え、かすかな二重唱も再現されるぜいたくさ。次々と歌を続けるゑでぃには、パッケージされた進行は既に頭にないようで、とり憑かれたように進める。だがどの曲も、ああ未だ聴いてなかった、まだ演ってなかった、と、名曲のオンパレードなので、無理やり延ばしているようには感じられず。しかも決してアンサンブルに乱れはない。Dsの機敏さ、ASaxのエンディングの最後の一音まで緊迫感を保つ。22時半を越えて、会場のスタッフがタオルを投げ入れた。帰宅後、録音を確かめると、休憩を除いても2枚のCDRに収まりきらない、トータル3時間弱の演奏だった。

  • ゑでぃまぁこん - しっぽサウンズ (CDR,limited)
  • 人間ロケット(7インチ盤)
  • ゑでぃさん謹製のぼうし