アグスティン・カルレバーロ

年末からの一連のタンゴ物についてその後をお伝えせねばならない。現行のところ、最大の収穫はアグスティン・カルレバーロ Agustin Carlevaro との出会いにあり。50歳代に入ってからギター編曲の仕事を始め、ピアソラ作品については60歳代になってから、とはいえ遥かブームとは無縁の1970年代からの仕事という。「interpreta Piazzolla」は自ら編曲した楽曲のギター独奏であるわけで、自作自演ならぬ「自編自演」。もし同じ楽譜を使っても複製品を聴くことができるわけではないのがクラシックの世界の慣例であるから、編曲の技巧よりもずばり、ギターソロ作品、として秀逸なのだ。当方の耳には他のジャンルでのいくつかの作品が過ぎっていく。高柳昌行セゴビアソンコ・マージュユパンキ、友寄隆哉、etc.etc...ギターソロという形態への偏愛もあるけれども、ジャンルを超えてすばらしい。なによりもまず一音一音が大事にされていて、活き活きしている。かといって気難しい音ではない。disc1のラストに思いがけず「Decarisimo」が位置されていた。プレゼンスを強調したような音質ながら僅か3分の中にドラマがある。敢えて甘美な旋律も用意されたこの曲を感傷的にもならず淡々と演じているだけなのに鳥肌が立った。当方が初聴した1982年来日公演以来のできばえか。幾枚かクラシック界からのピアソラ・カバーを試したが、或るものにはその上滑りに違和感を覚えたり、またNHKに出演したからといってすばらしいギタリストとは断定しないほうがいいなあ、とか感想を持った。そんなわけでピアソラ作品ではないモノを集めたコンピレーションも地球の裏側へ注文、今回もまた無事にウルグァイより着いたのだった。ただ両作品ともCDRであるようにみえた。アグスティン・カルレバーロ、感服した。

  • Agustin Carlevaro - interpreta Piazzolla (Ayui A/E 243-244 CD)
  • Agustin Carlevaro - Recital de tango (Ayui A/E 245 CD)