灰野敬二、柳茶屋@Lucrezia

日曜日。どうやって浜松へ向かおうか。帰宅することを思えば車で出かけたいが夕方から高速道路が混むことは確実。ただ休日割引が始まってから渋滞が増えたかというとそうでもないようで、過剰な報道がかえって幸いしているようだ。しかも当方の車にETCは取り付けられていない。どなたか書かれていたがETCのみの割引というのがふざけているし、このタイミングで踊らされるのも癪。とはいえ月曜日の前日、一泊するのも気が引ける。ということで迷った挙句、JR四日市駅まで車で向かい、新幹線に乗り換えるパターンを採る。日曜日のみ名古屋行き終電が23:17だから。7時半開演で2マンならば23時で大丈夫ではないだろうかと勝手に都合よく気持ちをかためる。名古屋駅のプラットホームでは相撲力士の姿が多くみられた。地方巡業から帰路につくようだ。ちなみに当方が乗車したひかりにも団体で利用していて、その付近の自動ドアの開閉が切られて手動化されていた。きっと体がはみ出て常時開閉してしまうからだろう。さてLucrezia。2500+500。若いお客も多く、後方立ち見が窮屈なほど。50名弱か。柳茶屋は久々。しかしリズム隊の2名は先月にも同じ会場で目にしている。その記憶を呼び起こしながら。柳茶屋の楽曲じたいはきっかりと構成されていて、安易なくずしは行なわれない。それもそのはず、様式に埋没しない緻密さがあって、単純そうに聞こえるブレイクでの溜めだとか、Ds×Bsの自在なドローンイングのような流れとか、とても濃い時間が流れる。古木さんはMCで、後ろに置かれた新作よかったら聴いてください、今宵演奏した曲はひとつも収録されていませんが、と会場の笑いをさそう。同ミニアルバム中2曲目「星空」の一節、力みのない歌いにも惹かれるのだが、そうはいってもどうしても古木さんのヴォーカルに耳が集中してしまう。曲ごとに表情を変えるヴォーカリゼーション。それはロックのらしさを追求しているともちがう。オルタナ系というくくりでよいのか不明だが、オリジナルなものだと思う。それとほとばしるギターソロをもっと聴きたいけれども短めに設定されていていつもお預けなのだ。灰野敬二Lucreziaでは2度目。ドラムセットもきれいに片付けられ、マイクスタンド2本とギターアンプ3台。ループが絡むものの基本的にギター&ヴォーカルのみのセット。Lucrezia自慢の?新ミキサーが冴えてかなり大音量のヴォーカルが明瞭に聞こえるせいでもあるまいが、断片にもどこか叙情性らしきメッセージが聞かれ新鮮に響くのだった。さて演奏は正味2時間に近づき、ループを外した美しい弾き語りに移っていく。この時間帯にもなれば《観戦》に敗れて帰路に着く客もちらほら、当方もまた残念なことに腕時計を気にしてしまう。過去の灰野敬二では幾度も、エレクトリック・ハーディガーディ@聖家族、哀秘謡@Tokuzoなど無念にもお暇せねばらない羽目に陥ったはずなのに、今宵もまた安易な選択が招いた失態となってしまうのかと、半ば覚悟しつつ柳茶屋から3時間以上立ち続ける。そして23時を超えて静かに歌が終わる。ダッシュにて浜松駅へ。帰宅は1AM過ぎ。