The Coca-Cola TVCF Chronicles

一度、リリースが見送られ、権利が複雑だからなぁと納得していましたが思いがけず日の目をみました。真っ先に確かめたかった映像がありました。たしか夕陽に輝く岬と若者らの姿があったはず。その夕陽は粒子が粗く、岩場に反射し、いそしぎが舞う、映画の一場面のように、小学生ながら悲しみを帯びているのを感じていました。いまだみぬ青春の擬似回想でした。そんなCMを見てもすぐに店へコークを買いに行ったわけではありませんでしたが。そして実際の映像を捜します。加山雄三も素敵だしワイルド・ワンズも興味深いですが。画面はいくつものヴァージョンがあっても音源はダブっています。1969年へ早送り。スクールメイツの歌う「コークをのめば」はスキャットを交えながら緊迫感あふれる佳曲。海鳥の声が強烈な郷愁を誘い、夕陽が輝いていたのはもしやこの曲ではなかったか、しかし実際の映像では人ごみの長い桟橋をカップルがへらへらと歩いていく明るい作品で、音楽だけから感じた緊張感は崩れ去ってしまいました。序でにもうひとつのスクールメイツ「コーク・トーク」も優れた小品です。30秒間、時間が止まってしまう(タイムレス)感覚。映像でもまずまずそれを裏切らない静かな出来栄えで、ほっとしました。それと先ほどの「コークをのめば」に顕著ですが音質がよすぎます。CDでは磁気素材の耐用限界のテープ起こしを想像させる録音状態でしたが濱田高志さんの発掘時にはみつからなかったのでしょうか。さていよいよ70年に入ると「Big New Life」のシリーズです。フィルムのストップ・モーションとスチール写真を組み合わせた、わずか30秒間に幾度もタイム・スリップできる仕掛けがつくられています。今回DVDを観て決して間違いありませんでした。しかし興ざめでもありました。タイムカプセルに保存されていたあまりに鮮明な画像は、懐かしむどころか記憶のずれを許してくれません。30年間の間に醸し出されてきた記憶が修正されただけに終わりました。それでも自らが30年間抱き続けた偽のイメージはそれはそれで残っていくのでしょうが。