トカラ列島〜稲垣尚友

先日、NHKスペシャルの再放送を観た。中国のいま。チベットへ向かって特急が建設され、観光客が大挙押し寄せているという。白人や日本人の観光客にとって寺院もまたディズニーランドと変わらないテーマパーク。小さな村々の家庭にある古物が安く買い叩かれてホテルのフロアで商品として陳列される。能力別賃金制度。貨幣経済チベット僧による法事をホテルで行うよう商談が行われる…このように同時代にいながら時間の歪みをなし崩しにするような場面は民放テレビが原住民を興味本位にとりあげたりする際にみられるが、当方にとっては臥蛇島のことを思い起こす。かつて、わずか数十年前にはカツオ漁で有利な立場であったのに冷凍技術が出現してあっという間に取り残されてしまったこと。教育・福祉・医療制度を導入できない焦り。共同体が崩壊するその究極のかたちが無人島になること。わずかに35年前のこと。トカラ本として期待したが食い込み足らず、ただ稲垣尚友の著作を文献として取り上げ、同氏とも交友があるようで、稲垣氏のトカラ本の予告もなされている。