ムジカでお見合い〜奇跡もじゃもじゃ対決編@ムジカジャポニカ

前口上。よりによって今宵、外出が危ぶまれたのだった。家庭の事情とはいえ4時過ぎてなんとかお役目御免となり、出発することができた。平日よりも休日のほうがハレの時間をつくりにくい。鶴橋にて環状線に乗り換え、大阪駅の手前、初めて天満駅で下車。ハードレインの頃でもこうすれば終電対策に余裕ができたはず。しかし雨中、既に闇に包まれた見知らぬ町角では東西南北もままならず、行きつ戻りつやっと到着。ムジカジャポニカmusicajaponicaもまたお初。2500+500。ドアから入ったところにカウンター席、既に出演者居り。赤色系の内装、ステージに向かい大判のテーブル2ヶが備え付け、席も埋っていた。ふだんは見慣れぬ女性客多く、これは坂本ファンなのか。やむを得ず後方のスタッフ席近く、ぽんすさんのいるソファを目指す。息つくまもなく録音の準備にかかる。河端さんがBBSで自らのライヴ録音はストレスがかかると発言していたのが印象的だったこと。今宵ビデオは持参せず、しかしスタッフの方が準備済みだった。
奇跡もじゃもじゃ対決編とは、西もじゃ代表:河端一Kawabata Makotoと東もじゃ代表:坂本弘道Sakamoto Hiromichi、仲人:津山篤Tsuyama Atsushiという企画。まず坂本ソロ。僅か30分足らずの間にチェロへのさまざまな奏法、のこぎり弾き、「お約束」の電動ドリルやグラインダーを実演。でもこれはイントロダクション。続いて東西対決となった。河端一はまずスタインバーガーを寝かせて仏具の「りん」*1を弦に置き、背筋を伸ばして「りん棒」*2で周囲を摩擦させながらループ音をつくる。妙に納得させられてしまう絵なのだが新機軸か。そういえば外人の客は居ないことに気づく。ドローンから互いの弓弾き対決、それぞれのピッキング対決まで、チェロとギターという差異を忘れてしまうほどの40分。この時点でも大満足なのだが休憩に入るや否や津山さんの「早よーやろ」の声がかかる、「早よー演って帰ろ」ではなく…河端×坂本×津山へ。津山篤はアコギをバイオリンに見立てて担ぎ上げ、弓弾きからスタート。津山さんの場合ギャグであり同時に大真面目に取り組んでいるのがすごい。河端さんの美しいドローン、坂本さんのエフェクタのかかったノイズとともに、津山さんの美しいアコギ弾き。春の到来を祝するかのようなみずみずしさ、以下この日の津山さんは「打ち出の小槌」状態、どんな対応も可だった。河端さんがアルペジオへ移り変わっていき、津山さんはすかさず早弾きでベース音を司り、いつしかPink Lady Lemonadeのフレーズ、そこに坂本さんの美しい旋律が舞う。酔いしれるのは女性客ばかりではないぞよ。そこへファズ化したアコギが被さり、河端さんの轟音が…と絢爛たる流れ。途中で津山さんが「ボーイング727」「ボーイング737ってあったっけ」「ボーイングエアバス」と連呼していて、一瞬何を言っているのかと次の瞬間、会場の皆に笑いが伝わる。同セッション第二部では3名がホーミー歌唱を披露する。思うに、河端×津山×の組み合わせは究極だ。羽野昌二しかりマニさんしかり…もちろん力量が伴わなければ成り立たないが…しかしながら今宵、小さなハコで行なわれた本企画、先日のTGSツアーとはまた異なる、工芸細工のような輝きをもった時間が流れた。自宅から2時間ばかりの場所で行われた幸福をかみしめる。

*1:河端さんからお伺いしたところこれは「りん」ではなくタイを訪れたときにみつけた供え物を入れるものらしい。確かに「りん」にはない台座に相当する部分がある。しかも鳴らしてみるとちょうど440Hzだったという!

*2:これも河端さんからお伺いしたところ「りん棒」でもなんでもなく何かの玩具の壊れた脚部だとのこと