第二部・ナビシケの美しく幸せな日々

小浜節、安里屋節、月ぬ美しゃ、繁盛節、山崎ぬあぶじゃーま、与那国ションガネー
休憩中に前から三列目へ移動。録音レベルを自動からリミッターへ変更。舞台には第一部のトリオの楽器が配置されているだけ。いったい何が始まるのか、右手から、ちょんまげかつらに和服姿の玉栄さんがのっそり舞台へ。首里からやってきた新任のお役人。はたまた、西川勲さん演じる正体不明の…狂言回しをまじえたものの、基本的には伊禮悦子の一人芝居、または西村悦子との二人芝居で、随所に玉栄さんのピアノ弾き語り、トリオ、噂の三線弾き語りで島唄が挿入されていく。津嘉山さんは効果音担当として、台風のDsソロ、波の音をはじめ生演奏で大活躍。ホールは幾度も爆笑に包まれる。うちなーぐちが聞き取れない当方出遅れる。しかしこれは藤木勇人のときと同様、問題ではない。伊禮さんは役者として長い経歴を持っていられるが存じ上げなかった。第一部の歌でみせた身のこなしは当然だったわけだが、芝居での動きはお茶目でかつ上品で可愛く、活き活きとしていた。ストーリーを正確に書けないので以下、メモ。

  • 名もなき庶民の、波乱万丈ではない人生を描いているということ。無理がない。琉球の、過去の題材をとっているとはいえ、それが日々の生活であったこと。
  • 春夏秋冬を描くといえば平凡であるが、歳月の流れの残酷さ、人間一人の力ではどうにもならぬことの大きさが胸に迫ってくる芝居だった。笑いの中の哀しさ、哀しさの中の笑い。
  • その演出のひとつとして玉栄政昭島唄がこの劇中歌としてこれほど適した位置はなかった。玉栄さんが機会あるごとに洩らしてきた、八重山での原体験が、お仕着せがましくなく伝わってくるよう。なによりも芝居+ピアノトリオ弾き語りの組み合わせの新鮮さ。
  • 表現者玉栄政昭の見直し。これまで舞台芸術の側面はあまり伺えなかったが、単に作詞・作曲・ピアニストだけでは言い表せていないことに気づく。私たちが物事に対し、こんなもんだろう、とタカをくくることで安心しているとしたらそれを脅かすのに十分な衝撃。
  • マニア化する風潮とは無縁でいること。閉ざされていくのではなく、人と人とが共同していくこと。それを繰り広げることが困難な昨今、玉栄さんの組織力

終演後、うちあげに参加させていただき、帰宅3時。9時起床。荘主が毛布を出してくれて助かる。よく晴れた月曜日。謝刈経由〜久茂地経由のバスターミナル行きが来たので乗る。高速バスの空港行きに乗り換える。沖縄を離れるときのBGMは「バイバイ沖縄」、ちなみに近づくときは「長い髪をなびかせて」(玉栄政昭)の旋律が耳で鳴り出す。