望月治孝、キキミミズ、白旗丘、馬場陽太郎@Lucrezia

「オータムギャップ(秋の裂け目)」。望月治孝とキキミミズによる企画。本来ならば日専連での活動だが浜松へ移動しての3ヶ月連続企画。ロケーションとしてせっかくの好条件ながらタイミング悪く最終回のみお伺いできた。望月治孝。ノンPA。AltoSaxの開閉音から始まる。ステージから客席へと歩み出て行きつ戻りつ。いつもの日専連と違うところは、Saxの断片ではなく微弱な持続音を吹き続けていたこと、しかも、音がきれいに出てくる。きれい、とは弱音を擦れることなく出し続ける困難さを克服している、という意味で。演者の集中はリスナーにも波及し、演者の身振りに左右されることはなかった。後半、よく鳴っていた、歌っていた。かつてジャンク楽器を駆使しながら持ち時間を工夫?していった構成もあったが、Saxのみで非常に聴かせる演奏であったということだ。たとえば開演直後、Lucreziaの金属製ドアの開閉音がグゥワンと鳴り響いたが演奏が中断されることなくハプニングス的な要素として吸収してしまったような、研ぎ澄まされた時間が流れた(工藤礼子CDの電話音と同様に)。ちなみに日専連との違いはお客の数も要素ではなかったか、というのが終演後の店長の見方(文責当方)。キキミミズ on el-gt。アブストラクトなインストと唄モノが同居。企画者だからか時間短めに感じられた。次回はバンド形態に接したい。白旗丘。衝撃のソロ初演に次いで2度目。こちらの心の準備がある分、期待は高まる。前回同様、尊敬する詩人の朗読と秋〜冬にまつわるMC。Voがoff気味になってあの深みのある声が弱まったのが残念。しかしDsは静かなパルス調を機軸に力みがなく、これは初回よりも聞かせた。馬場陽太郎。微細なel-gtの弾き語り。数曲のどれもがエッジを排除しあくまでもメロウに、音の揺らぎをかもし出す方法がかつてなく徹底されて心地よい。一方、直後の白旗丘とのデュオでは轟音で鮮やかな対照を示す。ラストはキキミミズ×望月治孝。7インチ・スプリットシングル盤に収録された曲の再演。ライヴということもあってレコードよりも印象は強く残った。終演の時間、これならば日曜日、新幹線の終電で帰宅することもできた。しかしすでに格安サゴーホテルを予約していることもあり、しばしバータイムを楽しむ。