藤枝静男・補遺

「藤枝文学舎ニュース」届く。その中で青木鐵夫氏が藤枝静男の再版について書いている。この会報を執筆しているような方々、リアルタイムで著作を求めてこられたような方々に無縁な話として新鮮に語っている。ところが、当方のように最初から再版しか入手できなかった輩にとってはなんとも厄介な事柄であったのだった。藤枝静男著作集全六巻。大学を卒業してから生協で注文したらまだ入手できた時代。ところが!第六巻の口絵の和紙には例の4色刷りの押印ではなく、ただの!肉筆が書かれているだけではないか。これは第二刷。つまり藤枝氏がエッセイで書かれていたように、幻の第七巻のために用意した署名なのか、それとも増刷時に一気に書いたものなのかわからない。ただ後書きに説明しているとおりの押印は初版だけなのだ。自分は後で入手することができた。よって著作集は自宅用と帰省先用と2セットある。
この勢いで藤枝静男をつづける。「今ここ」という遺作集がある。先日、これを箱から出してみたら見事にカビにやられていた。暗赤色の斑点が布貼りの装丁に、本文の天地に、と。ところが先日巨大掲示板を読んだらなんと「藤枝静男」スレが存在し、この赤い着色について少なくとも2名の方が触れているのに気づいた。「今ここ」が美品状態で残されるのは至難の技なのではないだろうか?どなたか、この真実を教えていただけないものか。
もうひとつ。すぐにタイトルが出てこないが氏が三重県へ旅行にやってきた話で「多気郡勢和村」を誤記している箇所が気になって仕方がない。作者の書いた表現がすべてであればこのとおりだが、文面から上記が現存の地名であることは明らか。高柳克也氏を失ったいま、こういった話題を向ける相手はいないものか。