跳躍へのレッスン@SPIRAL MARKET

H**駅近くの駐車場を探し24時間600円のところへ車を停め、近鉄急行で名古屋へ。T**駅で特急に乗り換えたとしても結局名古屋発は同じになる新幹線ひかりに乗り換えてJR静岡駅へ。誘惑に負け駅弁を食べる。若い頃静岡を訪れたのは試験だとか講演会だとかいつも具体的用事ばかりで街を楽しむに至っていない。プリントアウトした地図を片手に繁華街を進む。ビジネスホテルに続いて、華やかにデコレーションが、年始の華やかさが居残る通りも過ぎて暗い通りに進むと目的の雑居ビルに到着する。spiral market。開演30分前、まだ出演者だけだった。望月さんにあいさつ。8時までにぽつりぽつりお客が来て本日は9名。「多いほうだ」と主宰者たちは言う。若き女性が多い。開演間際には、UP-TIGHT白旗さんの姿も。
望月治孝。8PMジャストに始まる。チェーン+鈴+タンバリン〜eg+vo〜sax〜eg+voで30分。ギターならぬチェーン音の爆音から。鈴が当方の足元へも散らばってくる。迷った末、録音を自動調整にしておいてよかった。手段(楽器)が移ろっていく、ときに重ねながら(gt+vo+鈴)。弾き語りからegのみ、再び唄が聞こえてきたとき、とても懐かしい気持ちになった。saxのみPAの電源を切って専念する。そのとき偶然にも上の階から排水の流れ落ちていく音が。saxを吹くときはガニマタに姿勢で低く低く構える。あるいは椅子に半分腰掛けて前屈して。初めて生で聴いたから、というだけではなかろう、あとで過去の録音と比べてもこの日はよく出ていた。再びPAにスイッチが入るまで僅か6、7分間であったが短いとは感じなかった。なお演奏が始まってすぐにフロアへ座り込む。椅子がギィーギィーいうのを避けたいのと、デジカメ撮影のためと、このほうが落ち着くので(座高があるのでいちばん前に位置したときにはそうなってしまう)。
赤い河(豊岡健吉)。歌の最初のひとフレーズで即座に、凡庸なフォークではないことはわかった。抑制の効いた、穏やかなスタイルのなかにpassionを封じた歌。アシッド・フォーク・スタイル。ティム・バックリィ。遠藤賢司(最初期)、久保田麻琴(最初期)。ドノヴァン。タイムレス。若さゆえか、いや若くても当初から手垢にまみれたものにこれまで散々接してきたのだから年齢を賛美するだけでは理由になるわけではない。最初からこんな世界がつくれたのだろうか。二人目が終わったところで、望月さんが一人ひとり集金に廻る。白旗さんは「いちばん誠実なやりかた」と評したが全く同感。\1000
馬場陽太郎(sai baba bouzu)。上記2名がフロアに置かれた丸椅子で演奏したのに対し、奥まったステージにギターアンプと並ぶ。うまく写真が撮れない位置。二曲目以降、エフェクターのかかったgtと丁寧なvo,それとエフェクタ絡みの残響ノイズが交じり合ったサウンド。三曲目、聞いたことがある、だが思い出せぬ、自分の脳みそが働かない。1分ほど過ぎてやっと山下達郎だと気付く。アルバムの終わりから2曲目、このあと「僕の中の少年」が続く…と思い出すのもおぼろげ。いわゆる「くずす」とか「アレンジ」というふざけた態度とは無縁であり、端正な歌とシンプルなギターストロークもまたサイケ的解釈である。時間の余裕もあり轟音で大団円。
打ち上げにも参加。年代の差は関係ない、じじつ新人類以降は世代間格差は困難ではないかと理論武装(言い訳)していたはずなのに、馬場さんの親にかなり近い年齢と知らされて弱気になる。さて望月さんと話していて「チノシュウイチ」という話し言葉が「千野秀一」とすぐに結びつかないことに気付く。「チノシュウイチ」と自分が発音したのは何年ぶりのことか。
未知の企画へ向かうのは楽しい。遠方ゆえ現実的な困難さは付きまとうものの、今回、それ以上にエネルギーをいただいた感。静岡という地に対する憧れもある。1×3≠3。白旗さんがあらためて大きな存在。集客の問題は絶えず片隅に引っかかってくるが、掘り起こすしかない……
補)望月さんほか3名に本企画で最初に出会ってよかった気がする。たとえば東京のイヴェントにゲストした際ではなく。観たことはないがそんな気がする。あと2名のバンド演奏とどちらが先かといえば、こうしてソロにまず出会ったわけだ……。