鈴木昭男@カノーヴァン

やはり晴れ。夕方名古屋へ。ライヴ・スペースには既にラスタ色の帽子(何て言う?モノの名前知らないので)をかぶった初老の紳士が既に出番を待ってふらりと立っていた。隣りに座っていた客はOZディスクの田口氏ではなかったか、声はかけられなかったが。なんとも間のあいた時間だったので、持参したパンフにサインいただく、一方は日本語、もう一方は英語で。会場の隅に腰掛けて石笛を吹くことに始まり、グラス・ハーモニカ、アナロプスなど氏が創作した楽器のいくつかと再び石笛、それらの演奏をはさんでトークが進められた。パフォーマンスというには音楽的だが、ライヴというには音楽作品という完結性がなく、この場にいる生身の鈴木昭男を体験していくしかない。たしかに音を聴かせてくれる。クリスタル・チューブを5本並べたグラス・ハーモニカでは時刻が消えてしまうような瞬間が幾度も訪れる。しかし一方で感じるのは、これは鑑賞するための音ではなく、音を発生させる行為じたいが音楽といおうか、たとえばアナロポスという糸電話のような「楽器」を一方が女性が持ちつづけたがどこかエロティックな行為を連想してしまったし、鈴木昭男が「楽器」を扱う姿勢が決してオーバーにならず、簡素な身なりと茶目っ気のあるまなざしで自然体であって、いわば好感が持ててしまう「胡散臭さ」であった。またアーティストが寡作で稀少な存在からか、観客との馴れ合いは発生しなかった、良い場が2時間半続いたことを付け加えておく。唯一の不満は逆説的だが、カノーヴァンというお洒落な画廊で行われたということ。もちろんここでなければ実現しなかったのだろうが、丹後の野外で行われるような匿名な場所だったらなあと思った。私は昼間訪れた、海岸に近いとある海の家を思い出していた。CD「奇集」limited edition(といってもブックレットがホチキスの代わりに糸綴じというだけのものだが)結局求めてしまう。早くも騙されてしまう。ついでにKeiのCDR「limited No.5」も。